華やかな装飾や瞬間的なトレンドが注目を集める現代のファッションにおいて、
バーバリーはいつも「静かに、しかし揺るぎなく」存在し続けています。
ひと目でわかる派手さよりも、近づいたときにふっと気づく気品。
多くのブランドが声高に自己主張するなかで、
なぜバーバリーは100年以上も世界中の人々に選ばれ続けてきたのでしょうか。
その理由は、単なる人気や高価格では説明しきれない、
もっと深く、もっと人間的な物語にあります。
19世紀のイングランド。
濃い霧と雨が街を覆い、濡れた衣服は重く、冷たく、人々の生活を苦しめていました。
その環境に向き合い、「誰もが快適に動ける服を作りたい」と考えたのが、
若き仕立て屋トーマス・バーバリーでした。
彼は貴族でも著名デザイナーでもありません。
ただ、自然と人の両方に誠実でありたい、という職人でした。
研究と失敗を繰り返し、ついにひとつの答えに辿り着きます。
──通気性を失わない防水布「ギャバジン」。
風雨を防ぎながら身体が呼吸できるという革新的な素材は、
のちに「生活を変える布」として知られるようになります。
ギャバジンから誕生したバーバリーのコートは、第一次世界大戦で将校の装備として採用されました。
肩のエポーレット、胸元のストームフラップ、腰のDリング。
今ではデザインの一部として愛されているこれらのディテールは、すべて実用性から生まれたもの。
戦場で人を守るための機能が、現代の街で品格に変わっている──
これほど“理由のある服”は他に多くありません。
そして戦後、この軍服は人々の日常に溶け込み、
作家、映画俳優、アーティストたちがこぞって纏います。
スクリーンの中で揺れるコートの裾は、
やがて「知性」「孤独」「強さ」という感情と結びつき、普遍的なイメージを形づくりました。
バーバリーのチェック柄は、もともと外側ではなく
**「コートの裏地」**として密やかに存在していました。
見せつけるのではなく、そっと忍ばせる。
この控えめな美意識こそが、バーバリーが他ブランドと一線を画している点です。
やがてチェックはスカーフやバッグに広がり、
いまでは世界で最も認知される柄のひとつへ。
それでもそのデザインは、強く主張しすぎず、近づいて初めて存在感を放つ――
バーバリーらしい奥ゆかしさをずっと保ったままです。
バーバリーを選ぶ人は、派手さや外向きの強さを求めているわけではありません。
むしろ、声を大きくする必要のない種類の自信、
「私はわたしのままでいい」という静かな確信を大切にする人が選ぶブランドです。
手に取ればその理由がわかります。
丁寧に縫われたトレンチコートは10年、20年先も美しく、
カシミヤのマフラーは凍える冬の風から静かに守ってくれる。
そしてチェック柄は、距離が縮まった瞬間にだけそっと存在を知らせてくれる。
誇示ではなく、内側から滲む品。
それがバーバリーを纏う人に宿る特別な魅力です。
近年のバーバリーは革新を続けています。
新しいロゴデザイン、若いデザイナーの起用、デジタル技術を活かしたショー、
環境への責任を果たすための再生素材の採用など、未来に向けた改革は止まりません。
しかし、コートのシルエットと凛とした佇まい、
雨のロンドンを思わせる色調、
“人に寄り添う服”という原点は変わらないまま。
変わるものと、変わらないもの。
その絶妙なバランスこそが、バーバリーを時代から時代へ運び続ける力です。
バーバリーの服は、あなたを誰かの模倣にするための服ではありません。
あなた自身の存在を、少しだけ強く、そして穏やかに照らしてくれる服です。
雨の日にも姿勢を崩さないこと。
流行に振り回されず、自分の美意識を信じること。
静かだけれど確かな気品を選び取ること。
バーバリーとは、
「生き方そのものを纏う」ブランド。
だからこそ、100年以上愛され、これからも誰かの人生に寄り添い続けるのでしょう。
リンクを転送:https://www.aaakopi.com/article-257.html